SPEEDBOY! | ジャポニカ自由帳。

SPEEDBOY!

目が覚めると突然「走りたい」という衝動にかられた。気づくとぼくは青梅街道→山手通り→第一京浜を爆走中。裸足だけどまぁいいか。会社に行くのなんてとっくのとうに忘れて心の中で思うことは一つだけ。(もっと早く、もっと早く!)走りながらふと後ろを振り返るとなにやらぼくの背中からずっと後方に白い雲が出てる。これって飛行機雲みたいな?「えーーー!!」今度は、そんな風に驚いた声が耳のかすかに後ろから聴こえてくる。どうやらとうとう音速の壁を超えたみたいだ。さっきは驚いたけど、そうだった当たり前だった、ぼくは宇宙一のスプリンター。右に出る者なんていやしない。かけっこじゃ誰にも負けないぜ。ババババ、バン!爆音を鳴らしながらぼくは第一京浜を左にそれて大井競馬場を猛スピードで駆け抜ける。競馬場の壁という壁を音速のソニックブームでぶちこわしながら。(あれれ、ちょうど競馬中だ、馬たちがびっくりして泡吹いてら。馬死んじゃうのかな、かわいそうだな)そう思った瞬間ぼくはちょっと失速しちゃう。弱気ってすぐに足に影響する。いかんいかんいかん、ぼくはぼくは走り続けなくては。。。。。

舞城王太郎『SPEEDBOY!』
スローがなにかともてはやされるこの日本で
あえてスピードで勝負するキューピーマヨネーズのCMみたいな小説。
いや、止まることを止めない鮪みたいな?
超オススメ!