ロバート・キャパ | ジャポニカ自由帳。

ロバート・キャパ






“キャパが、ーーカメラとは、決して冷たいメカニックなものではない、ということを、なによりあきらかにしたことは、何人も同意するだろう。恰も、ペンのように、カメラも使うひとによって、総てが、決められるのだ。それは、じかに、人間の理性と感情につながっているのである。”

と、いったのは、ジョン・スタインベックである。
さて先日、日本橋三越で開催していた(~20日で終了)ロバート・キャパ写真展、キャパ・イン・カラーに行ってきた。
戦争写真家として日本で最も人気のあるロバートキャパ。そのキャパが撮影した、第2次世界大戦の未発表写真が、この度大量に発見された。注目すべき点は、そのすべてがカラー写真であること。ノルマンディー上陸作戦などの名作を残した彼の写真は、そのほとんどがモノクロだった。しかし、あまり、知られてはいないが、彼はカラーも撮っていた。これらの写真からは、60年あまり前の世界が、色褪せることなく伝わってくる。
ただ、実際に見て、モノクロとは大きく異なる点を見出した。被写体となる人間のほとんどに感情というものがないのだ。あったとしても、それはなにか撮る側の意図が強く反映されているように思えた。だから、それらカラーの写真を見て、最初に感じたのは、すべてをある考えに基づいて描いた質の高い絵、のようだ、ということだった。
対して、モノクロには、特有の哀しさがある。また、「ちょっとピンぼけ」で知られているような、流れるような全体をもってして、それを強調する。
つまり、スタインベックがいった理性や感情は、「現実」なのだ。だが、キャパのカラーは、現実を映し出さない、あえて(?)。もっと違う、ココではないどこかの、ある風景を写しだす(実際は、被写体は爆撃に向かう直前の飛行士だったりするのだが)。
突然だが、9月11日のテロ事件の映像を思いだしてほしい。旅客機がビルにぶつかる瞬間の映像。あれを見た瞬間にすぐ現実と受け止めた人は何人いただろうか。たぶん、大多数の人が、映画みたいと感じたのではないか。これと、同じような感覚がキャパのカラー写真にはあるのだ。
だから、今、こういう感覚がある今、になってカラー写真が発見されたのは、ただの偶然ではない。ぼくはそう思う。